数万円で買える卓上型から高級外車並みの高額機種まで、用途・造形精度により様々な3Dプリンタが存在します。中でも「インクジェット/マテリアルジェット式3Dプリンタ」と呼ばれる機種が、高精度で複雑な立体モデルを作ることが可能とされています。
「インクジェット式3Dプリンタ」で立体モデルを作るには「モデル材」と「サポート材」が必要となります。「モデル材」とは、その名の通り立体モデルを作るための材料です。
3Dプリンタのサポート材とは
例えば「たまご」の立体モデルを3Dプリンタで作るとします。たまごは自立しませんので、下図の黄色部分のような「土台」が必要になります。この「土台」にあたる部分を「サポート材」という材料で、たまごは「モデル材」という材料を同時に積層していき、造形されます。
たまご型のように造形モデルにサポート材が覆われている場合
出来上がった造形物から「土台」となるサポート材を取り除き、「たまご」を取り出します。
モデル(たまご)の周りを覆った「サポート材」の除去は簡単です。
ちくわ型のように空洞部分にサポート材が充填されている場合
次に「ちくわ」のような空洞のある円柱を作る際、空洞部分に「サポート材」が充填されます。
そのため、下図のように空洞部分が小さくなる(数㎜単位)程、「サポート材」の除去は困難になっていきます。
3Dプリンタ サポート材の種類と除去方法
サポート材の種類 | 除去方法 | 問題 |
ジェル状 | 高圧洗浄水による剥離 | 高圧洗浄装置設置工事が必要 水圧による造形物破損リスク |
WAX系 | 熱溶解→ 油性/水性洗剤による洗浄 |
サポート材除去に手間がかかる (冷却→熱溶解→油性洗浄→水性洗浄) 造形物にWAX油分が残る |
水溶性 | 水浸漬による溶解 | 微細穴等の細かい形状は除去困難 |
WAX系サポート材の従来除去方法
- 恒温槽等の加温装置にてサポート材を熱溶解 60~120分
- 油性洗剤にて超音波洗浄 10~60分
- 水性洗剤にて超音波洗浄 10~60分
- 上記工程で足りない場合は手作業によるブラッシング 10~60分
従来工程での問題点
- モデルの熱変形
- 洗浄不良によるサポート残渣の付着(中空内・微細穴内など顕著)
- 手作業による除去精度・作業時間の個人差
EXTRIPPER®JAMによるサポート材除去
当社が開発したEXTRIPPER®JAMは、WAX系サポート材を極めて簡単に処理できる画期的なシステムです。
- JAM工程 15~40分
- 美観工程 2~10分
- すすぎ工程 1~3分
- 手作業 なし
サポート材除去にかかる時間は20~60分+手作業0分!全工程が液中処理なのでモデルへの直熱ダメージが少ないのも特徴です。
従来手法との比較
従来方法 | 所要時間(分) | EXTRIPPER JAM | 所要時間(分) | |
工程① | 熱溶解 | 60~120 | JAM工程 | 15~40 |
工程② | 油洗 | 10~60 | 美観工程 | 2~10 |
工程③ | 水洗 | 10~60 | 最終すすぎ | 1~3 |
工程④ | ブラッシング | 10~60 | なし | |
除去時間 計 | 90~210分 | 除去時間 計 | 20~60分 |
EXTRIPPER®JAMの原理
従来方法はサポート材の融点を利用した熱溶解なのに対し、EXTRIPPER®JAMはサポート材との相溶性を持った専用除去剤です。サポート材はEXTRIPPER®JAMに溶け込みながらモデルから剥離されていきます。EXTRIPPER®JAM液中から引き揚げられたモデルには再度、「JAMと溶解されたサポート材(混合物)」がまとわりつきます。モデルにまとわりついた(混合物)はN-EXTRIPPER美観で除去します。N-EXTRIPPER美観は(混合物)と相溶性があり、且つ水溶性ですので(混合物)を洗い流した後、水で美観をすすぎ落として完了です。
EXTRIPPER®JAMが使用できる条件
- EXTRIPPER®JAMは常温時固体です。
- EXTRIPPER®JAMを65℃以上に加温できる容器・機器にて使用します。
- N-EXTRIPPER美観は60℃以上に加温できる超音波洗浄機で使用します。
- EXTRIPPER®JAMは使用後、固体に戻りますが、再度加温して使用できます。
EXTRIPPER®JAMを使用すれば、人の手による作業と処理時間が大幅に削減できます。
EXTRIPPER®(JAM/美観)は、これまでの洗浄哲学を一新し、洗浄という概念を取り払い当社が自社開発し誕生しました。
固形物の「JAM」、水系の「美観」は、環境にやさしい日常使いの成分から出来ており、繰り返し使用でき一定期間液を交換することなく使えます。
1㎜以下の貫通穴にも作用し、パラフィンWAX系サポート材洗浄にかかる時間コストを大幅に短縮します。