切削加工時における樹脂の熱劣化の原因

樹脂の加工方法において、金型を使った成形加工に並んで代表的なものが切削加工です。切削加工は、ドリルやフライスなどの刃物を回転させ加工していく方法です。非常にメジャーな加工方法ではありますが、高品質での加工をするには難易度が高く、技術力が問われます。

切削加工の難易度を上げている要因の一つとして「熱劣化」があげられます。熱劣化は塑性変形や摩擦によって発生した熱が原因で起こる樹脂材料の劣化です。厳密に言えば、切削工具の金属部分と樹脂が触れ合った状態で高温が加わることで、金属が触媒的な働きをし、樹脂材料を劣化させるのです。

樹脂の熱劣化

塑性変形は外力を取り除いても残る変形のことです。切削加工の際に、樹脂材料には大きな力が加わり変形し、その際に熱が発生します。大部分が切り屑となって放出されますが、発生した熱の一部は材料本体に残るため、切削抵抗の大きな加工をしてしまうと放熱が追いつかず、材料本体側に熱劣化を引き起こすほどの高温になってしまいます。

熱劣化を引き起こした部分は、劣化に伴って脆くなり、機械的強度が落ちるなどの性能低下を引き起こします。そのほかにも、黄変や退色などの変色を引き起こし、製品の外観を悪化させる場合があります。

樹脂の熱劣化の対策法

樹脂の熱劣化を防ぐには、簡単に言うと「切削加工時に発生する熱を減らせば良い」ということになります。
加工時に発生する際に発生する熱を減らすには、次のような方法が効果的です。

  • 切削抵抗を減らす
  • 切削油を使用する
  • 切削抵抗を減らす

熱を抑えるには、切削抵抗を減らすというのが、まず第一に試したいポイントです。切削抵抗を減らすには、以下の方法があります。

  • 切削条件を落とす
  • 刃物を新品に交換する

切削条件を落とすことで塑性変形量が減り、発生する熱が抑えられます。刃物の周速を落としたり、切込み量を減らしたりなどがこれにあたります。最も手軽に試せる方法ですが、加工速度が落ちてしまうというデメリットがあります。

刃物が摩耗しているのであれば、新品に交換することで切削抵抗を減らせます。切れ味が悪くなっている刃物では、うまく切り屑を切断できず塑性変形量が増えてしまうため、結果として発熱量が増えてしまうのです。

樹脂材料に熱劣化が起こってしまった場合は、切削条件と刃物の摩耗をチェックしてみてください。

切削油を使用する

切削油を使用すると、様々な効果で発生する熱を抑えられます。切削油の代表的な効果として以下のものが挙げられます。

  • 潤滑による摩擦の減少
  • 冷却作用による切削温度の低下
  • 切り屑の除去

切削油の潤滑作用によって、切削時の摩擦を低減してくれます。これにより、材料と刃物の間から発生する摩擦熱を低減してくれるというわけです。また、切削油を使用することで冷却効果を得ることができます。切削油を切削部にかけることで、刃物や材料に溜まっている熱を速やかに吸収し、放散してくれます。

切り屑の排出が悪いと、熱がこもってしまったり、余計な摩擦熱を発生させる場合があります。切削油をかけることで切り屑の排出を促し、切り屑が溜まることを防いでくれます。

切削油にはこのような優れた効果が3つもあり、熱劣化に対しては優れた効果を発揮してくれます。

切削油は大きく分けて「水溶性」「非水溶性」の2つの種類があります。水溶性は、冷却性にすぐれており、非水溶性は潤滑性に優れているというのがそれぞれの大まかな特徴です。

切削油には優れた点が多いですがデメリットもあるので、理解して使用する必要があります
切削油のデメリットは切削油と相性の悪い材料があるという点です。

例えば、ナイロン系の材料に水溶性の切削油を使用すると、ナイロンが吸水してしまって寸法変化を起こしてしまいますし、弱アルカリ性の切削油をポリカーボネートに使用すると材料に化学反応が原因でクラックがはいってしまいます。

このようなトラブルを引き起こさないためには、切削する材料や用途によって切削油の種類を使い分ける必要があります。

切削油を使用する場合は、材質に合わせて最適なものを選んで使用するようにしてください。

樹脂の熱劣化を防ぐ「RAISER SCREW」

樹脂素材の熱劣化を防ぐには、加工時に発生する熱を抑えるか、放散させるかがとても重要になってきます。切削油の使用がとても効果的ですが、どれを選べばいいのかわからないという方も多いでしょう。そんな方におすすめしたいのが「RAISER SCREW」です。

熱劣化対策に切削油の導入を検討しているのであれば、RAISER SCREWを候補に入れてみてください。

樹脂専用水溶性切削油|RAISER SCREW(ライザースクリュー)

RAISER SCREWは、樹脂専用の水溶性切削油で、冷却性能に特化した切削油です。樹脂専用で冷却性能に特化しているため、樹脂素材の熱劣化対策には最適な切削油となっています。

RAISER SCREWは機械の油を浮かせ、切り屑を沈殿させる作用が強く、作業中の切削油の透明度を高く保つことができます。透明度が高いことで、切削部の視認性がよくなり作業の確認をしやすくなります。