切粉が及ぼす悪影響とは

樹脂の熱劣化

樹脂の場合、金属よりも柔らかく、切削加工自体が行いやすい反面、切粉が繋がりやすかったり、微粉が出やすかったりと、切粉がもたらすトラブルに悩まされることも多くなってきます。樹脂の切削加工で発生しやすい切粉のトラブルには、次のようなものがあります。

  • ツールや機械への絡みつき
  • ワークへの溶着
  • スラッジによる切削油の詰まり

ツールや機械への絡みつき

切粉が長くなりやすい樹脂の切削加工では、長くなった切粉がツールや機械に絡みつく可能性が高くなってしまいます。ツールに絡みついたまま加工をしてしまうと、物理的な干渉によって寸法が狂ったり、加工面が荒れてしまったりする場合があります。柔らかく柔軟性のある、PPやPAなどの樹脂材料でこのようなトラブルは頻発します。

ワークへの溶着

切粉が切削部に滞留してしまうと、切粉が摩擦熱を溜め込み、ワークが溶け出してしまう場合があります。溶けた切粉がワークに溶着してしまうと、表面が荒れてしまい不良となってしまいます。

ガラス繊維やカーボン繊維などで強化された樹脂材では、刃物の摩耗が原因で切粉や熱が発生しやすくなっています。そのため、ガラス繊維やカーボン繊維で強化された樹脂材料を使用する際には切粉の溶着に特に注意する必要があります。

スラッジによる切削油の詰まり

細かい切粉は、スラッジとなって切削油に溜まり、工作機械のフィルターを目詰まりさせてしまったり、切削油ノズルを詰まらせたりします。切削油の詰まりが原因で冷却ができず加工温度が上がってしまい、溶着などの問題が発生する場合もあります。

ひどい場合は機械の故障の原因ともなるので、細かい切粉が出ている場合はフィルターの点検などをこまめに行う必要があります。

切粉除去の方法

切粉をそのまま放置していては良質な加工はできません。そのため、切粉はできるだけ発生させないようにするか、早めに除去していく必要があります。切粉の除去や対策については、以下のような方法がよく用いられます。

  • 手動で除去する
  • ツールパスを変更する
  • 切削油を使用する

手動で除去する

ツールなどに絡みついた切粉を手動で除去するのは最も原始的ですが、確実な方法です。専用の切粉除去ツールが販売されていたり、切削油を噴出するオイルガンで飛ばしたりする方法があります。

この方法のデメリットは、溜まった切粉の除去を加工中に行うのが難しいという点です。機械が動いている途中で切粉の除去は危険ですのでできません。加工が終わってから切粉を除去することになるため、オペレーターが常駐している必要があります。

連続して加工を行いたい場合や、機械の稼働率をあげたい場合などは手動で切粉を除去する方法はあまり推奨できません。

ツールパスを変更する

マシニングセンタやNC旋盤などでよく用いられる方法がツールパスに工夫を加える方法です。切粉が長くならないように工具のツールパスを切削中に止めたり、ワークからわずかに離したりすることで切粉を短くし、ツールなどへの絡みつきを抑える手法です。

その他にも、絡みついた切粉を治具などに引っ掛けるような動作を加工に入れ込むなどして、加工中に発生した切粉を自動的に除去する方法もあります。紹介したような動作を加工中に入れることで加工時間は長くなりますが、加工中に溜まる切粉を大きく抑えることが可能です。

また、作業者が常駐して切粉の除去を行わなくてもいいため、連続して加工を行う場合は特に有効な手法です。人件費の削減やオペレーターの負担軽減にもなるため、自動運転を行うような場合であれば積極的に導入したい方法です。量産加工に向く対策のため、小ロットの加工や単発の加工にはあまり向きません。

切削油を使用する

切削油を使用せずにドライで加工している場合、切削油を使用することで切粉の発生を抑制できる場合があります。切削油を使用することで加工温度を抑え、切粉の排出も促せます。特に切粉の溶着に悩まされている場合は、切削油を使用することで効果を実感できるでしょう。

また、切削油を加工部に効率よく供給できるクーラントスルーを備えた刃物を使用すれば、切削油の効果をより高めることが可能です。樹脂の種類によっては使用できる切削油の種類が限定される場合があるので、樹脂と切削油の相性については事前に確認しましょう。

樹脂の切粉発生を防ぐ「RAISER SCREW」

切粉対策で切削油の導入をしようと思っても、切削油の種類が多すぎてどれがいいのかわからないという方におすすめなのが「RAISER SCREW」です。

RAISER SCREWは、樹脂加工専用の水溶性の切削油です。冷却性と洗浄性に優れているソリュブルタイプの切削油なので、切粉が要因で発生する熱が原因のトラブルなどには特に効果を発揮します。また、切粉を沈殿させる効果が強く、スラッジが原因で起こるトラブルも引き起こしにくくなっています。

これから切削油を導入しようと考えている方はぜひ「RAISER SCREW」を選択肢の一つにいれてみてください。