トリクロロエチレンとは

高度成長期から現在に至るまで、工業用脱脂洗浄剤として広くご使用いただいておりますトリクロロエチレンは、多くの現場で重宝されています。特に、金属加工部品製造業におきましては、加工油を丁寧に洗浄し、次の工程へと納入する際には、加工油を完全に除去することが品質維持のために不可欠です。このような背景から、トリクロロエチレンはモノづくりの現場で幅広くご利用いただいている洗浄剤です。
一般的な洗浄方法としては、液体のトリクロロエチレンを沸点まで加熱し、蒸気状態になったものを用いて洗浄物を処理する方法が採られています。しかし、洗浄物の出し入れの際には、大気中への蒸気の放出が避けられず、これが大気汚染の一因となっていることも事実です。この問題に対処するため、多くの自治体が大気放出抑制に関するガイドラインを設け、対策に取り組んでいます。

トリクロロエチレンとは

トリクロロエチレンと環境問題

トリクロロエチレンと環境問題に関しては、環境や健康に悪影響を及ぼすという指摘が数十年にわたりなされております。現在に至るまで、トリクロロエチレンに関連する労働基準規則の改正や、大気汚染問題への対処がより切実な課題となっています。また、海外各国では製造及び使用を禁止する規制が設けられるなど、様々な動向が報じられ、私たちの耳にする機会も増えてまいりました。

問題が改善されない理由

問題の改善が困難であるその理由について、トリクロロエチレンを含む『塩素系洗浄剤』は、非常に優れた洗浄力を持つことは広く認識されています。コストパフォーマンス、洗浄能力、乾燥性、作業時間の短縮といった多くの利点があります。
しかし、環境への負荷や健康リスクを抑えつつ、これらの洗浄剤を使用することは高いハードルが存在します。確かに、最新式で高性能な洗浄装置を導入すれば、環境負荷のリスクは軽減されるでしょう。また、トリクロロエチレンと同様の速乾性を持つ次世代の洗浄液も多数開発されています。
ただし、これらの新しいソリューションは、従来のものに比べて価格が高く、すべての小規模工場が導入するには大きな経済的負担となります。さらに、製造現場において見積もり価格に「洗浄費用」を上乗せすることが難しいため、必要なコストを捻出することが困難であるのが現状です。
加えて、トリクロロエチレンの正しい使用方法に関する知識を作業者が得る機会も少なく、これが環境と健康へのリスクを増大させている事実もあります。

トリクロロエチレン公害を解決する選択肢

国内においても長きに渡り、この環境問題への代替提案や取り組みが行われていますが、作業効率、洗浄能力、低コストを重視する町工場、中小企業において未だこれに見合う代替洗浄方法は無いに等しいと言えます。

金属洗浄における作業では、優れた脱脂性能と乾燥性が求められるため、トリクロロエチレンを含む塩素系溶剤を使用する現状から転換することは、困難な状況にあります。
これらの事情を総合的に考慮すると、以下のような選択肢を検討することが可能です。

  1. 高性能で環境に配慮した洗浄装置を導入し、大気排出量を基準値以下に抑える。
  2. 現行の洗浄装置に改造を施し、同様に大気排出量を基準値以下にする。
  3. トリクロロエチレンの効果的な代替洗浄液への切り替えを行う。
  4. 新しい工程への全面的な移行を図る。

備考として、排出基準や規制は都度の改正が行われておりますので、常に最新の情報にご留意いただくことを推奨いたします。
また、本文中で述べられているコメントは、弊社が独自に調査した結果に基づくものです。したがって、トリクロロエチレンに関する正確な情報については、専門機関が発表する文献を参照し、ご自身でご確認いただくことをお勧めします。